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【イミテーション・ゲーム】荒波のようで破綻のない秀逸な脚本【感想】

出典:公式サイト

ほんとにもう、いろいろとすごい。

映画『イミテーション・ゲーム』の感想です。

第二次世界大戦中、当時「世界最強」と言われたドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読に挑んだ天才数学者の人生を描いた物語ですが、俳優の演技、展開、テーマのどれをとっても素晴らしいです。

そしてなんといっても衝撃を受けるのが、この激しい物語が事実に基づいていること

現実にこんなことがあったのか…と息をのみますし、およそ80年も前に数学者が成し遂げた偉業が私たちの今の生活に大きく影響を及ぼしていることにも壮大なロマンを感じます(映画を見たときの感動を損ねてしまう恐れがあるので、どう影響を及ぼしたかは書きませんが)。

やっぱり、時代は異端者たちがつくってきたのですね。

ぜひ見てほしいです。

なお、本作は評価も高く数々の賞にノミネートされ、アカデミー賞脚色賞(小説や舞台を基にした脚本が対象)やトロント国際映画祭観客賞など約20もの賞を受賞しました。

面白いポイント

  • 普段は出会えないような奇抜な人間を見られる
  • ジェットコースターのような目まぐるしい展開
  • 「戦争」「異端」「性」「夫婦愛」「裏切り」などいろんなテーマについて考えさせられる
  • 「事実は小説よりも奇なり」を実感できる

こんな人にお勧め

  • 歴史が好きな人
  • 天才を見たい人
  • 素晴らしい俳優の演技を見たい人
  • 最後まで退屈しない映画を見たい人
  • いろんなことを考えたい人

前半までのあらすじ

(動画は予告編です)

1939年、イギリスがヒトラー率いるドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が始まった。

英国政府はナチスが活用する暗号機「エニグマ」の解読を試みようと機密作戦として国内から選りすぐりの人材6人を招集。その中にいたのが、若くしてケンブリッジ大学の特別研究員を務めていた「数学の天才」アラン・チューリングベネディクト・カンバーバッチ)だった。

エニグマは当時、「解読不能」と言われた世界最強の暗号機。暗号のパターン数は天文学的で、10人が1日24時間働いても全ての組み合わせを調べ終えるのに2000万年かかるほどのもの。

暗号機を見たチューリングは「美しい。まさに死神の歪んだ手だ」と漏らし、「マシンにはマシンで対抗を」と仲間からは外れ、一人黙々と作業に没頭する。

周囲の多くの人間とは違っていたチューリングは子どものころにいじめに合い、母親からも「異質」と言われていた。

大人になっても異端者ぶりは変わらず、冗談を解さない、協調性がない、作戦を共にする仲間からのランチの誘いにも乗らない

その一方で、並外れた行動力や決断力を持ち、暗号機を解読するためのマシン製作の予算を取ろうと単独で英国首相チャーチルに手紙を送り、チャーチルから直々にチームのリーダーに任命される。

すると、チューリングはすぐに「使えない」2人をクビにして後任を公募。

新聞にクロスワードパズルを載せ、解けた者を会場に集めるというユニークな手法で選び出したのが、チューリングよりもパズル解きの能力に秀でた女性ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)だった。

チューリングは優しくウィットに富むジョーンの人柄に魅かれ、ジョーンを通して徐々に他のメンバーとも打ち解けるように。

出典:映画.com

チームに一体感が生まれ、エニグマ解読への熱も高まっていくのだったが―。

カンバーバッチの演技が素晴らしい

出典:映画.com

この映画の魅力は冒頭に挙げた通り、盛りだくさんなところです。

ベネディクト・カンバーバッチが天才を見事に演じ切っていて、予想できない展開が次々に現れて、戦争のことだけではなく、人間関係や性の問題、夫婦愛についても考えさせられます。

ぼくが『イミテーション・ゲーム』を見ようと思ったのはこのスチール写真に魅かれたからなんですが、すごい写真じゃないですか?

ちょっと普通の人間じゃない感じ、人工的でミステリアスな雰囲気がズドンと伝わってきます

作中でもチューリングの異質さをカンバーバッチがよく表現していて、普通の人が言う冗談を理解できないときのキョトンとした表情が様になってますし、ジョーンに会って間もないころに彼女に見せる笑顔もなんだか顔の皮が無理やり引っ張られているような機械的な印象があっていいんですよね。

出典:映画.com

かといって、完全無欠のヒューマノイドのような人間かというとそうではなく、人を切実に愛し、脇目も振らずに仕事に没頭し、人生に悩みを抱えて苦悶の表情を浮かべるといったように人間味もあります。

常人が理解できない異質さとぼくたちがうなづける普通さとのバランスが絶妙で、彼の演技が映画にのめり込める要因になっていることは間違いありません。

荒波のようで破綻のない優れた脚本

アカデミー賞脚色賞を受賞したことにもうなずけます。

『イミテーション・ゲーム』は脚本が秀逸で、最後まで予想外の展開が続きます。

天才たちが自身の優れた頭脳を使って暗号を解読しようという筋ですから、多くの戦争映画とは違って絵にインパクトはありません。

にも関わらず、見終わった後に「激しい映画だったな」という印象が残るんですよね。

これはもう、荒波のような展開を立て続けに打ち込みながらそれでいて破綻なく収束させる、という優れた脚本があるからでしょう。

前半のあらすじを読んでもらうだけでも予想外の展開とそのテンポの良さが想像できるのではないかと思うのですが、後半も同じ熱量とスピードを持って物語は揺れ続きます。

さらに、心地いい展開の合間合間に先述したような様々なテーマ性が盛り込まれているので、それらについても考えさせられる仕組みになっているんですね。うまいんです。

第87回アカデミー賞では脚色賞に『セッション』や『博士と彼女のセオリー』、『アメリカン・スナイパー』もノミネートされていて、これらの作品を抑えての受賞ですからそのすごさが伝わるのではないでしょうか。

脚本を手掛けたグレアム・ムーア=下写真=の受賞後のスピーチもいい。

出典:映画.com

私は16歳だった時、自殺未済をした。当時、私は周りになじめない、自分を変わった人間だと思っていた。でもそんな私が今、ここに立っている。この映画は自分のことをそう思っている子どもたちに捧げる

書きながら視界がにじんできました。

時として誰も想像しないような人物が想像できない偉業を成し遂げる

あなたが普通じゃないから世界はこんなに素晴らしい

『イミテーション・ゲーム』の印象的なセリフは、グレアム・ムーア自身が切実に伝えたいメッセージでもあるのでしょう

彼だからこそ、異端者の悲哀を描き切ることができたのかもしれません。

イミテーションゲーム
(別名チューリングテスト)

イミテーションゲームとは、コンピューターの思考能力を評価するために行なわれるゲームのことである。人工知能(AI)の開発に利用される。

コンピューターと人間に同じ質問をして、それぞれがどちらの回答であるかを隠し、第三者に提示してどちらがコンピューターの回答であるかを判定させるというものである。

人間とコンピューターの区別が付かないならば、そのコンピューターは優秀である(より人間に近い)とされる。―IT用語辞典「バイナリ」

参考資料

第87回アカデミー賞の全部門ノミネート(映画.com)

アカデミー賞脚色賞は『イミテーション・ゲーム』(Movie Walker)