ドラマ

【日本で一番悪い奴ら】綾野剛さんの演技が光るヤバい実話もの【感想】

出典:映画.com

ときに正義の象徴ともされる警察が、実は“日本で一番悪い奴ら”だった――。

この宣伝写真を見れば、多くの人が映画の大枠を想像できるのではないでしょうか。

実話を基にしたシリアスなテーマを内包する作品ですが、全体的には一級のエンターテイメント作品に仕上がっていて、とても楽しめましたし、笑えました。

日本で一番悪い奴ら』の魅力は何と言っても、綾野剛さんの演技力です。

朴訥な青年が警察組織の悪に染まり変わっていく様を大胆に演じていて、それは振り切っています。痛快です。

“爽やかなイケメン”の印象しか持っていない人はぜひ、綾野剛さんの良さを体感してもらいたいですね。

面白いポイント

  • エンターテイメントとして秀逸
  • 痛快ながらも実話というリアリティー
  • 素晴らしい綾野剛さんの演技
  • 社会の暗部を知られる
  • 考えさせられるセリフ

こんな人にお勧め

  • 刺激的で楽しい映画を見たい人
  • 犯罪ものが好きな人
  • 暴力とエロを見たい人
  • 人間とシステムを考えたい人

前半までのあらすじ

(動画は予告編です)

諸星要一は朴訥な青年だった。

柔道の腕を買われて北海道警察の刑事になったものの、上司に叱られ雑用をこなす日々を送る。不器用な彼は調書一つうまく書けず、口下手で上司には「おす」としか返せない。

そんなある日、刑事課のエースとして知られる村井定夫(ピエール滝)に飲みに誘われ、ホステスに囲まれる中で警察組織の実情を教わる。

調書を書いても意味はない。ホシをあげて1点でも多く稼いだ奴しか認められない。ノルマをこなすか、それともデカを辞めるか。

村井は笑いながら続ける。

「デカに必要なのは便所に飛び込む勇気だ。そこに飛び込んで、情報を引っこ抜け」

村井はヤクザとつながりを持ち、組員から情報を仕入れていたのだった。

柔道に打ち込んでいたときと同じように、諸星は目標を定めたら突き進む男。翌日から彼は暴力団組員の事務所やナイトクラブ、飲食店など方々に自分の名刺を配って回った。

人が変わったように諸星は暴力的になり、町の不良から絡まれたときは徹底的に叩きのめした。

そしてある日、過去にシメた組員から情報を仕入れた諸星はヤクザの下っ端の家に押し入り、覚せい剤と銃を見つける。

警察から表彰された諸星は一層、暴力団との関係を深めていき、刑事として次々に成果を上げるようになる。

やがて刑事としては村井に代わるエースに、町に出れば組員やホステスに慕われる顔役になっていくのだが…。

千変万化する綾野さんの演技

出典:映画.com

綾野剛さんがとてもいいです。

不器用で朴訥な青年だった諸星が、村井から悪の薫陶を受けたことをきっかけに豹変していく様を実に激しく演じています。

笑う、怒る、びびる、叫ぶ、脅す、殴る、ヤる。いろんな表情と動きが求められる役柄ですが、それぞれが様になっているんですよね。

後に兄弟分となる弱小暴力団の幹部・黒岩を演じる中村獅童さんとの罵り合いは迫力十分で見応えがありましたし、一方で要所にあるエロいシーンもいい

「自分、日本で一番の刑事になるんで!」と言いながらホステスを後ろからガンガンに突いているときの表情、その苦悶と恍惚にゆがんだ顔のアップを見たときは吹き出しましたし、真っ裸で風俗嬢からマットプレイをされている綾野剛さんも見ものです。

「おい、入っちまったじゃねぇかよ」「あん、すごい刑事さん」

なんて場面もベタですがリアルで楽しい。

綾野剛さんはいろんな顔を見せるのが上手な俳優さんだなと思いました。

特徴的な切れ長の二重は、笑うと細くなって優しさや愛嬌が出ますし、睨むと刃のように鋭く冷たい印象が生まれます。皮膚の薄さが影響しているのかもしれませんが、表情が様々に変化するので多面的な役に合う。

線が細いので、“凄腕の柔道選手”の設定には無理があると思いましたが、気になったのはそのくらいでしょうか(綾野さんは役作りのために10㎏体重を増やしたそうです)。

それと、この映画に推進力をもたらしているのがピエール滝さん

出典:映画.com

大柄な体躯とくまのある目元、やっぱり悪い役がはまります

ピエール滝さんが醸し出す不穏な空気が映画の期待感を高め、見る者を冒頭からぐいぐいと引っ張ってくれるんですよね。

実話を基にしたリアリティー

『日本で一番悪い奴ら』は実話をモチーフにした映画です。

北海道警の元刑事だった稲葉圭昭(よしあき)氏の著書『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』(講談社文庫)が原作

稲葉氏は2002年、覚せい剤使用と銃の不法所持で逮捕され、有罪判決を受けました。

これをきっかけに、北海道警の違法捜査が明るみに出たのです。

稲葉氏は現役時代に100丁以上の銃を押収、“銃対(銃器対策課)のエース”として一目置かれる存在でしたが、実は押収した銃のほとんどがやらせ捜査によるものだったといいます。

1990年代当時、長崎市長銃撃事件(1990)や金丸信自民党副総裁銃撃事件(1992)といった銃を使った重大事件が立て続けに起きたことで、警察庁は1993年、全国の警察に銃器対策室を設置。

道警も銃の押収に躍起になり、従来の捜査ではその量を増やせないと判断、持ち主のわからない“クビナシ”の押収を認めました。

そこで稲葉氏は捜査協力者(S・スパイ)だった暴力団組員などから秘密裏に銃を入手し、道警が押収したことにしていたそうなのです。北海道警も組織ぐるみで稲葉氏のやらせ捜査などに加担していたそうです。

悪いのは人間か、システムか

出典:映画.com

『日本で一番悪い奴ら』は、人間とシステムを描いた映画でもあります。

刑事は点数を稼がなければ評価されず、また警察署は銃をたくさん押収しなければ警察庁から評価されない。

判断の基準は数字であり、数字を獲得した経緯は問われない。

となれば、自然と「何をやっても結果を出せばいい」という考えになり、結果を出す過程で悪が生まれやすくなってしまいます。

果たして悪いのは人間か、システムか。システムが正常に働いていれば、諸星は悪人にならなかったのか。

私たちはさまざまなシステムの中で生きていて、システムの定めで行動を左右されます。

人間を定義づけているものがその人の性格や能力だけではなく、システムが多分に関わっていることがこの映画を見ればわかるんですね。

痛快で楽しいだけではなく、現実的なテーマも考えさせられるのです。

考えさせられるセリフ

印象的なセリフが出てくることも『日本で一番悪い奴ら』の魅力です。

イカれた奴らが単に激しいことを言っている。そんな風に簡単に切り捨てられない深さがあって、ある意味で現実の一つの側面を映しているように思えるのです。

ぼくがいいと思ったものを紹介しますね。

「公共の安全なんてもんわなあ、誰にも守れねーよ」

「マジで安全な社会にしよーと思うんならなあ、産婦人科医になるしかねーよ。生まれてくるガキ、皆殺しにするんだ」

「一丁でも摘発できれば道民は安心するんですから」

「クソもミソも全部飲み込んで使えるもん全部使い倒してなあ、ようやく務まる商売なんだよ、そうでもしないと世の中良くなんねー」

「シャブならオレらがさばかなくても誰かがさばく。どうせ世間に出回るんだよ。ちょっとくらい胴前はねてもバチは当たらねー」

最後に

諸星のモデルとなった稲葉氏は2011年に刑期を満了し、以降はメディアの取材にも応えているようです。

この記事が面白かったので興味のある人は読んでみてください。

綾野剛演じる悪徳警官のモデルとなった伝説の男が語る、腐臭漂う警察の実話